2011年3月14日月曜日

部分的炉心溶融(メルトダウン)の仕組み

「炉心溶融=メルトダウン」の言葉がメディアで頻繁に聞かれるようになった。これに関して2011年3月14日付けでNY timesに投稿された「部分的炉心溶融の仕組み」がとても簡易な言葉で記述されており、この場を借りて日本語に翻訳してみました。twittchyさんが翻訳のほとんどを担ってくれました。(2011/03/15完成。http://twitter.com/#!/twittchy)もし版権等で問題があればご連絡ください。


元の文章
http://www.nytimes.com/2011/03/14/science/earth/14meltdown.html?smid=tw-nytimesscience&seid=auto

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原子力の専門家によると、被害の程度および放射能流出の可能性という点で、原子力発電所における部分的炉心溶融(メルトダウン)と完全炉心溶融(メルトダウン)との間には非常に大きな違いがある。

専門家によると、東北地方にある2基の原子炉でこの週末に起こったとされる部分的炉心溶融は、必ずしも、コア内のウラン燃料が溶融したという意味ではなく、燃料棒が単に破損する場合(燃料棒の一部が長時間にわたって冷却水から露出する事によりひび割れし、燃料中の放射性元素の一部が流出する)も含まれる。

これに対して、完全炉心溶融(冷却水が全て失われて燃料棒が完全に露出すれば、その後数時間以内に起こり得る)では、数千個もの燃料ペレットが原子炉の底にたまり、自身の発熱により華氏数千度の溶融燃料のプールを形成し、ほぼ確実に溶融が起こる。

専門家によれば、完全炉心溶融ですら核連鎖反応が生じる可能性は非常に低いと考えられてはいるが、このような溶岩状の燃料によって原子炉の圧力容器が破られ、次に格納容器が破られ、結果的に、広範囲にわって放射能が流出する可能性がある。

このような大惨事を回避するべく、この2基の原子炉の作業員は、コアが完全に隠れるまで海水を注入するという試みを行っている。しかし、通常の冷却システムが復旧しない限り、作業員は、海水注入作業を何週間もやり続ける事になる。

これら日本の原子炉と同じ設計の原子炉に携わっていた元原子力エンジニアArnold Gundersen氏はこう語る:「長ければ丸一年間にわたって毎日数千ガロン(1ガロン=3.8リットル)という水が必要になる。」

これらの日本の原子炉は、1970年代に建てられたゼネラルエレクトリック社製のものであり、最大6インチ(約15cm)の厚さの鋼鉄製の圧力容器の内部に、長さ12フィート(約366cm)の細い燃料棒が数千本、藁のように束ねてられている。燃料棒1本1本は、ジルコニウム合金製の筒の中に、指先程の大きさの酸化ウランのセラミックペレットを沢山入れたものである。

通常、この燃料コアは循環する水の中に浸漬されており、この循環水が核分裂の熱を奪って水蒸気を生成する。この水蒸気を用いてタービンを回して発電する。

今回地震により電力とポンプが止まると同時に、(制御棒の挿入により)発電所の分裂反応は正常に停止した。しかし、原子炉は華氏約550度(摂氏約288度)で作動しており、また、燃料内の放射性元素は崩壊しながらも発熱し続けるので、原子炉内には大きな残留熱が残る。水を循環させるポンプが無ければ、水はすぐに沸騰する。

今回の原子炉の少なくとも1基においてこの現象が起こったようだ。技術者達が急遽、最終手段として海水注入を行うまでの間、コアの上側部分が露出したままの状態となった。海水にはホウ酸が混ぜてあり、もし分裂反応が始まってしまっても、ホウ酸により鎮める事ができる。

コアの一部が露出すると、ジルコニウムは急速に酸化し始め(錆び始め)、脆くなり、ひび割れる。錆により爆発性の水素が発生し、ひび割れによりヨウ素やセシウムのような燃料の中で最も揮発性の高い放射性元素が逃げてしまう。圧力上昇を防ぐためにガスを格納容器内に逃がすのだが、今回の場合、ガスはさらに格納容器を通過して外気中へと漏れた(あるいは、逃がされた)はずである。

燃料棒が完全に割れてしまうと、中の燃料ペレットが下にこぼれていく。これを技術者は「ウォッシュアウト」と呼ぶ。

27年間ゼネラルエレクトリック社にて原子炉の設計に携わったコンサルタントのMargaret Harding氏はこう語る:「それら(燃料ペレット)を支えるものは何もない。」しかし、コアの下側部分は損傷していないので、ペレットは、底に集まるとは限らず、原子炉内のあちこちに散らばった状態になるかもしれない。氏曰く「炉心溶融が起こるとは限らない。」

1979年にペンシルバニア州で起きた、コアの一部が露出したスリーマイル島事故では、炉心溶融が起きていた事が後に無人カメラにより確認された。史上最悪とされる1986年のチェルノブイリ事故では、急な電圧変化により爆発と原子炉火災が起こり、放射性物質の巨大な雲が大気中に発生した。

もし、これらの日本の原子炉の1つで完全炉心溶融が起こった場合(すなわち、作業員が水を注入し続ける事が出来なくなってコアが完全に露出した場合)、短時間のうちに溶融した燃料が圧力容器の底に溜まる事になるであろう。Gundersen氏曰く「最悪の場合、溶融燃料は圧力容器外に出てしまい、水蒸気爆発を引き起こし、そうなると、格納容器が破壊される事になるであろう。」
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